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熊本空港アクセス鉄道

熊本空港アクセス鉄道は、JR豊肥線三里木駅~熊本空港(阿蘇くまもと空港)を結ぶ鉄道新線計画です。実現すれば、熊本駅~熊本空港間が約39分で結ばれます。

熊本空港アクセス鉄道の概要

熊本県は、熊本空港のアクセス改善について検討しています。その方法の一つとして浮上したのが空港アクセス鉄道の建設です。2018年12月に熊本県の蒲島郁夫知事が、熊本県議会本会議の一般質問で、熊本空港アクセス鉄道の建設を進めることを表明。2019年2月21日には、JR九州と基本合意したことを発表しました。

ルートはJR豊肥線三里木駅から分岐し、熊本県民総合運動公園を経由し、熊本空港に至る約9kmです。運動公園付近に途中駅を新設します。

2019年度の調査では、A1、A2、B、Cの4つのルート案が示されました。

画像:熊本県

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A1ルートは三里木駅から緩やかに分岐し、国道57号線沿いの密集市街地を高架で越えていきます。同じルートで密集市街地を地下でくぐるのがA2ルートです。Bルートは、三里木駅からやや急カーブで分岐し、密集市街地を地下でくぐるルートです。Cルートは、空港付近の施設への影響を小さくするために迂回しています。

距離がもっとも短いのはBルートで約9.0km。A1、A2は約9.3km、Cルートは約10.7kmです。熊本駅~熊本空港間の所要時間は、A1、A2、Bが39分で、Cが40分です。

事業費はルートにより約437~561億円を見込んでいます。ルートの最終的な決定はなされていません。

画像:熊本県

2019年2月の熊本県とJR九州との基本合意では、空港アクセス線は三里木駅~熊本空港間に建設し、空港線の列車は三里木駅で折り返し、豊肥線には乗り入れません。

熊本県が中心となって設立する第三セクターが路線を整備・所有し、JR九州に運行を委託します。JRは第三セクターに出資しません。ただし、豊肥線の利用者増による「根元受益」が見込めるため、建設費の3分の1を上限に、根元利益の範囲で建設費を負担します。

運賃は三里木~空港間420円と想定しています。熊本~三里木間が380円ですので、熊本~空港間が800円です。三里木~中間駅間は220円、中間駅~空港間は300円です。

建設時の資金計画は、「空港アクセス鉄道等整備事業費補助」(国18%、県18%)と「エコレールラインプロジェクト補助」(車両費、国1/3)の補助金制度が適用可能です。

2019年度の調査では、こうした資金計画や収入予想において事業採算性を検討しました。その結果、単年度資金収支の黒字転換年が32年、累積資金収支の黒字転換はしないと見積もられています。

鉄道事業の採択基準は、「累積資金収支が開業40年以内に黒字化」ですので、採算性の基準を満たしていません。

もう一つの基準である費用便益比は公表していません。

熊本空港アクセス鉄道の沿革

熊本空港は、熊本市中心部から直線距離で約15kmの位置にあり、地方空港の立地としては市街地から離れています。現在の主たる交通手段はバスで、熊本中心部の交通センターから約50分、熊本空港からは約60分かかります。市街地から空港までのアクセスに時間がかかりすぎるため、以前から熊本市中心部と空港とを結ぶ空港連絡鉄道の整備構想が存在していました。

2004年には実際に空港アクセス鉄道の建設が調査されました。当時の試算では、総事業費を286億円で、採算を取るには1日5,000人の利用が必要と見積もられました。

しかし、当時は1日2,500人程度の利用者が精一杯で、鉄道事業の採算性の確保は難しいとの判断に至りました。2007年度には、鉄道建設計画を凍結。肥後大津駅から熊本空港へシャトルバスを運行して連絡する施策に軸足を移しています。

その後、インバウンド需要の盛り上がりやLCCの隆盛を経て、熊本空港の利用者数は増加。2020年には空港民営化が予定されており、2022年度末には新ターミナルビルも完成します。

こうした状況の変化を受け、熊本県は2018年度にアクセス手段の改善案を再検討。鉄道延伸(事業費330億~380億円)、モノレール新設(2,500億~2,600億円)、熊本市電延伸(210億~230億円)の3案で事業費や所要時間、輸送量などを比較検討しました。

結果として、モノレールは事業費が高すぎ、市電は速達性などに難があり、最終的に鉄道延伸案を採用しました。

画像:熊本県

鉄道延伸案では、JR豊肥線からの分岐駅の候補として、原水駅と肥後大津駅も検討されました。原水分岐の場合、熊本駅~熊本空港の所要時間は約38分、1日の利用者数は約5,900人、事業費は約330億円と試算されました。肥後大津分岐の場合は、同約42分、約5,800人、約330億円です。

結局、利用者数が最も見込める三里木駅分岐案に絞り込みました。

画像:熊本県

画像:熊本県

三里木分岐が決定し、熊本県はJR九州との協議を開始しました。事業主体は、県を中心とする第三セクターを想定。国の補助金を受けて線路や駅舎などの施設を整備し、列車の運行をJR九州に委託する形でJR九州と基本合意しました。JR九州には、根元受益の範囲内で、整備費の3分の1を上限に負担を求めます。

2019年度には、三里木~熊本空港間のルートについて、詳細な調査をおこない、上記のようにA1、A2、B、Cの4ルート案を検討しました。

この調査では、2018年の試算である約380億円を大幅に上回る事業費が必要と見込まれました。その結果、事業採算性や費用便益比で新線建設の基準を満たせないことも判明しました。

新型コロナウイルス感染拡大で空港利用者が激減した時期でもあり、蒲島知事は「いったん立ち止まる」として再検討を示唆。BRTとの比較なども行うことになり、空港の利用者回復状況も見ながら検討が続けられそうです。

アクセス鉄道が実現した場合、豊肥線に乗り入れない予定ですが、将来的に乗り入れる可能性については含みを残しています。その場合、豊肥線の線路容量が問題になりますが、空港アクセスの増発目的で複線化する場合は、熊本県が費用を負担します。

熊本空港アクセス鉄道の開業予定時期は未定です。2018年度の検討後、熊本県は、2022年度の空港新ビルの完成から「できるだけ期間をあけず」に完成させることを目指すとしていました。しかし、2019年度調査で事業費の試算が上振れし、事業化の基準を満たせなかったことで、計画は暗礁に乗り上げています。

2019年度調査では、2029年の開業を想定していますが、無理でしょう。実現するとしても、早くて2030年以降になりそうです。

熊本空港アクセス鉄道のデータ

熊本空港アクセス鉄道のデータ
営業事業者 JR九州
整備事業者 未定(第三セクター)
路線名 未定
区間・駅 三里木~阿蘇くまもと空港
距離 約9km
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1067mm
電化方式 1,500V
単線・複線 単線
開業予定時期 未定
備考 --

熊本空港アクセス鉄道の今後の見通し

熊本市内から熊本空港は遠く、バスでのアクセスでは所要時間がかかりすぎるため、鉄道新線は待ち望まれてきました。しかし、2000年代まで、熊本空港の利用者数は伸び悩み、採算性の問題でアクセス鉄道は実現してきませんでした。

その後、LCCの登場やインバウンドの隆盛により、2010年代半ばから熊本空港の利用者数は増加。今後も多数の利用が見込めることから、鉄道新線の議論が本格化してきました。

背景には、2022年度完成予定の新しい空港ターミナルビルの建設があります。アクセス鉄道を作るなら、ターミナルビルは駅ホームを考慮した構造にしなければなりません。そのため、作るかどうかの結論を急ぐ必要が出てきて、2018年度に空港アクセス鉄道の構想が再検討されたわけです。

そしてJR九州と基本合意がまとまり、2019年度から詳細調査に入りましたが、その結果、建設費の見積もりが上振れ。さらに、新型コロナの影響もあり、計画は停滞しています。重要な指標である事業採算性、費用便益比の両方で基準をクリアできなかったことから、建設は遠のいたといわざるをえません。

熊本県が目標としてきたのは、「空港ターミナル開業からできるだけ期間をあけない」時期。そのため、2020年度半ばの開業も期待されましたが、現時点では実現性を含めて不透明です。

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