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蒲蒲線(新空港線)

蒲蒲線は、東急蒲田駅と京急蒲田駅を連絡し、羽田空港へのアクセス向上を実現する空港連絡鉄道の構想です。地元大田区では「新空港線」と名付けています。

東急多摩川線を延伸し、東急蒲田駅から京急蒲田駅の地下を経由し、京急大鳥居駅に至る計画です。このうち東急蒲田~京急蒲田間について、2030年代の開業を目指して事業が進められています。

蒲蒲線の概要

蒲蒲線は、東急多摩川線の矢口渡駅付近から、東急蒲田駅、京急蒲田駅付近の地下を経由して、京急空港線大鳥居駅に至る路線です。

東急多摩川線と京急空港線の直通運転も模索されていますが、東急多摩川線は狭軌(1067mm)、京急空港線は標準軌 (1435mm) と軌間が異なるため、現在の車両では乗り入れることはできません。

事業の旗振り役は大田区です。同区の案では、第1期として東急矢口渡駅-京急蒲田駅(地下)を狭軌で建設し、東急多摩川線の全列車が京急蒲田駅まで乗り入れます。

続く第2期で京急蒲田駅-大鳥居駅を建設します。京急線への直通運転方式は決まっていませんが、京急線を複数の軌間に対応する三線軌条にする方式と、フリーゲージトレインを導入する方式が想定されています。

直通運転が実現すれば、東京メトロ副都心線・東横線・目黒線方面からの直通列車を東急多摩川線経由で運転し、渋谷や新宿などから羽田空港まで乗り換えなしで直結できるとしています。

画像:大田区

新空港線(蒲蒲線)計画は、2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」に盛り込まれ、「矢口渡から京急蒲田までの事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」とされました。

一方、大鳥居までの延伸については、「軌間が異なる路線間の接続方法等の課題」があるとされました。

当時は、西九州新幹線へのフリーゲージトレインが開発中だったこともあり、その導入が第一選択肢として想定されていましたが、現在は開発自体が中断しています。 仮にフリーゲージトレインが実用化したとしても、高額な車両になるため通勤電車に大量投入するのは困難という指摘もあります。

一方、三線軌条は維持の負担が重いため、線路を保有する京急が後ろ向きです。したがって、京急への直通運転のメドは全く立っていないといっていいでしょう。

大田区としては、198号答申に従って、第1期として東急多摩川線を京急蒲田駅までつなぎ、そこで京急空港線に乗り換える形の実現を目指しています。大田区の試算によると、矢口渡-京急蒲田間の建設費は1360億円です。


画像:大田区資料

2022年6月には、東京都と大田区が整備について合意。国交省の都市鉄道利便増進事業の補助を利用し、国、自治体、事業者がそれぞれ3分の1ずつを負担するスキームが固まりました。自治体負担分のうち3割を東京都が、7割を大田区が負担します。

2022年10月には、大田区が61%、東急電鉄が39%を出資した第三セクター「羽田エアポートライン」が設立されました。羽田エアポートラインは、鉄道施設を保有する第三種鉄道事業者となります。東急は、羽田エアポートラインから鉄道施設を借りて運行する第二種鉄道事業者となる見込みです。

事業に積極的な東急と対照的に、京急はやや消極的です。東急は自社沿線から羽田空港へのアクセスが改善する計画なので悪い話ではないですが、京急は都内からの空港アクセスで自社の品川~蒲田間と競合するため、積極的にはなりにくいようです。

現時点では、第1期、第2期とも、着工時期、開業時期などは決まっていません。大田区では、第1期を2030年代に開業させたいという目標を掲げています。

2022年に6月に公表された需要予測では、1日あたり約5.7万人が利用し、うち航空旅客が約1.5万人、都市内旅客が約4.2万人となっています。費用便益比は2.0、累積資金収支黒字転換年数は17年で、ともに国が新線建設に対して補助をおこなう基準をクリアしています。

蒲蒲線の沿革

蒲蒲線の調査が始まったのは1987年です。地元大田区が東西鉄道網の整備に関する調査を開始しました。

その後、2000年1月の運輸政策審議会答申第18号で「京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線を短絡する路線の新設」として、2015年までに整備着手することが適当である路線に位置づけられています。

2006年1月には、大田区が「大田区東西鉄道「蒲蒲線」整備計画素案」をまとめています。さらに、関係各社による勉強会なども立ち上げましたが、事業化には至りませんでした。

東京都が2015年7月10日に発表した「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」では、蒲蒲線は「整備について検討すべき路線」とされ、「優先的に整備を検討すべき路線」には入りませんでした。

2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として盛り込まれました。

これを受け、大田区が事業へ向け調査をおこない、2020年6月6日に、大田区と東京都が「新空港線(矢口渡~京急蒲田)整備事業について」合意しました。大田区が事業を推進する主体となり、都市鉄道利便増進事業の地方負担分の負担割合を東京都3割、大田区7割と決めました。2022年10月14日には、整備主体となる羽田エアポートライン株式会社が設立されました。

蒲蒲線のデータ

蒲蒲線データ
営業構想事業者 東急電鉄
整備構想事業者 羽田エアポートライン
路線名 未定
区間・駅 矢口渡~東急蒲田~京急蒲田~大鳥居
距離 3.1km(矢口渡駅-大鳥居駅)
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 未定
電化方式 1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考 都市鉄道利便増進事業

蒲蒲線の今後の見通し

蒲蒲線は2000年の18号答申で「2015年までに整備着手することが適当な路線」とされ、建設が有力視されてきました。

しかし、なかなか着工できなかったのは、軌間の異なる東急と京急を直通させるという構想に無理があったからでしょう。3両編成の多摩川線に8両編成の東横線を乗り入れさせることにも難があります。東横線直通列車は多摩川線内無停車にするしかありませんが、そうすると途中で待避設備が必要になります。こうした問題は解決していません。

こうしたことから、大田区は東急蒲田駅と京急蒲田駅間の区間に絞って建設をする姿勢に転換しました。京急蒲田駅で乗り換えは生じるものの、東急東横線方面から羽田空港へのアクセスが改善するため、一定の効果はありそうです。

2022年6月に、東京都と大田区が事業化に向けたスキームで合意し、10月には事業主体となる第三セクターも設立されたので、第1期の矢口渡~東急蒲田~京急蒲田間に関しては、実現する見通しが立ちつつあります。ただ、設計や用地買収などはこれからで、開業時期などは見通せません。

運行形態も明らかではありませんが、3両編成の多摩川線が多摩川~京急蒲田間を各駅停車で運行することがベースになりそうです。計画では東横線との直通も想定していますので、東急蒲田駅と京急蒲田駅は10連対応のホームで建設し、東横線からの優等列車も走らせることになりそうです。

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