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富士山登山鉄道

富士山登山鉄道は、富士スバルライン上にLRTを敷設する構想です。富士山吉田口五合目へのアクセスを、現在の道路交通から登山鉄道に転換するもので、山梨県が主体となって計画の検討をすすめています。

富士山登山鉄道の概要

「富士山登山鉄道」構想は、富士山への来訪者が激増するなか、自動車交通を主体としたアクセスを抜本的に見直し、五合目のライフラインの整備を行おうというものです。山梨県が設置した富士山登山鉄道構想検討会が2019年から検討を開始し、2020年12月に「富士山登山鉄道構想(素案)」をとりまとめました。

画像:山梨県

富士山登山鉄道は、環境負荷が少なく輸送力のある鉄道を導入して来訪者増に備える一方で、全車指定席の定員制とし来訪者数をコントロールするのが目的です。また、軌道整備と同時にライフラインも整備し、五合目まで電気や上下水道を引くという副次的な目的もあります。

システムはLRTを想定。比較的氷雪に強く、緊急車両との併用が可能なためです。緊急事態の際に、軌道上を救急車や消防車が走れるのが、普通鉄道などにはないメリットです。一方、難点としては、下り勾配で速度制限を受けます。

ルートは富士スバルラインをそのまま活用します。複線軌道を敷設しLRTを走らせる構想とし、道路の拡幅などの改変は原則としておこないません。スバルラインの車道幅員は約6.5mで、最急曲線でも幅員内にLRT軌道を複線で設置することは可能です。

画像:山梨県

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道路にはあらかじめレール溝を刻んで成形したコンクリートブロックを埋設し、ライフライン用管路を併設します。山麓を起点とし、五合目までの区間を整備します。総延長は28.8kmです。

画像:山梨県

起点となる山麓駅は、東富士五湖道路の富士吉田料金所付近です。山麓駅には駅施設や交通広場を設置。パーク・アンド・ライド駐車場や車両基地も整備します。富士急行河口湖駅から約2km離れていますが、市街地などへの延伸については将来的な検討課題としました。

終点となる五合目駅は、富士スバルライン終点に設けます。半地下式を想定し、店舗など含めた五合目全体の空間再編をあわせて検討します。五合目以降の延伸はしません。

画像:山梨県

このほか、中間駅を4駅想定しています。既存の駐車場空間を活用する方針で、展望景観に優れる場所、既存遊歩道等との結節点が候補となります。 起点の標高は1088m(料金所)で、五合目は2305mです。標高差1217mを駆け抜ける鉄道路線となります。実現すれば、五合目は日本最高所の鉄道駅となります。

車両は蓄電池車両の使用を想定し、架線レスとします。バッテリーなどの機器を搭載しやすいように、軌間は1435mmです。 スバルラインの最小曲線半径は30m、最急勾配は8%です。これに対応する車両として、10m×3車体で1編成とし、最大2編成を連結します。つまり最長6連のLRTが走ることになります。1編成(3両)の車両長は30mで、最長60mの列車となります。

画像:山梨県

1編成の定員は120人で、着席利用を基本とする定員制とします。合計で24編成を用意します。 最高速度は40km/hですが、下りは25km/hに制限します。急曲線部では上下とも10km/hです。このため所要時間は上り52分、下り74分と差が付き、五合目から山麓へ下るほうが時間がかかります。

画像:山梨県

列車は乗ること自体を楽しめるデザインやサービスとします。たとえば、車内での飲食の提供や、モニターでのガイダンスの提供などを検討します。 運賃は往復1万円~2万円と想定。年間鉄道利用者数は、1万円なら310万人、2万円なら120万人で、100万人~300万人と見積もっています。

概算事業費は全体で1200億円~1400億円程度と試算。内訳は軌道、駅、車両基地などに560億円、電力・通信設備などに500億円、車両に170億円、ライフライン整備費に100億円などとなっています。

画像:山梨県

収支予測に関しては、運賃往復1万円で、年間300万人が利用し、総事業費が1400億円と仮定した場合、単年度損益は開業初年度から黒字。累積損益も開業2年度で黒字となります。資金収支は開業初年度から黒字となります。

事業スキームは上下一体、上下分離の双方を検討。国土交通省の支援スキームは都市型LRTを想定しているため、この計画には適用できないようです。

富士山登山鉄道の沿革

富士山に登山鉄道を建設するという構想は昔からあり、1935年には山麓と山頂を結ぶ「地下ケーブルカー構想」の計画が浮上。1940年に予定されていた東京オリンピックを視野に入れた計画でしたが、同オリンピックの開催中止とともに立ち消えになりました。

戦後、1960年代に富士急行が山頂へのケーブルカーを敷設する構想を発表。このときは、富士山にトンネルを掘り、5合目~8合目間と、8合目~頂上間に分けて、それぞれケーブルカーを建設する構想でした。

この構想は、1963年に「富士山地下鋼索鉄道」として免許申請にまで至りました。しかし、環境面への懸念から反対論がわき上がり、結局、1974年に申請を取り下げ。以後、富士山登山鉄道に具体的な動きはありませんでした。

再び動きが出るのは、2000年代になってからです。2008年11月に、富士五湖観光連盟が富士スバルラインに単線の線路を敷設して5合目まで結ぶ構想を発表。背景として、冬場の観光客誘致の狙いがありました。このときは、観光連盟の会長でもある富士急行の堀内光一郎社長が、登山鉄道を富士急と接続させ、JR線を使って成田空港ともつながる構想まで提唱しています。つまり、普通鉄道として構想されていました。

2013年6月、富士山の世界文化遺産登録を受けて、堀内社長が富士スバルラインの敷地を使って5合目までを結ぶ観光用鉄道の計画を発表。2019年に、富士山登山鉄道の検討を公約に掲げた長崎幸太郎が知事に就任すると、山梨県が「富士山登山鉄道構想検討会」を発足させ、本格的な議論を開始しました。

検討会での議論の末、2020年12月に、富士スバルライン上にLRTを敷設計画を素案として発表。2021年2月8日に開かれた検討会の総会で、正式に構想を了承するに至りました。ただ、事業化に向けた具体的な検討はこれからです。

富士山登山鉄道のデータ

富士山登山鉄道のデータ
営業事業者 未定
整備事業者 未定
路線名 未定
区間・駅 山麓(富士吉田料金所付近)~吉田口五合目
距離 28.8km
種別 未定
種類 軌道(LRT)
軌間 1,435mm
電化方式 非電化(蓄電池式)
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考 --

富士山登山鉄道の今後の見通し

「富士山登山鉄道構想検討会」がまとめた素案を見ていると、富士山登山鉄道は十分に現実感があるように思えます。技術的にも採算的にもハードルが低く、あとは関係者のやる気次第、とすら思えてしまうほどです。

だからといってすぐに実現できるか、というと定かではありません。「素案」は行政と一部の事業者側の都合で練られた案で、実際に利用する登山者や、影響を受けるツアーを実施する旅行会社の声などはまったく反映されていません。国土交通省もいまのところ関与していません。

素案はあくまでもたたき台に過ぎません。採算性の計算も粗い部分があり、精緻に計画を詰めていくと、さまざまな問題が出てくることも予想されます。ということで、開業時期などはまったく未定です。

画像:山梨県

筆者の感想をいえば、山頂まで行けるならともかく、五合目まで行くだけなのに鉄道利用必須となると、面倒だな、という気になります。したがって、鉄道そのものを魅力あるものにして、乗るだけで楽しくなるような仕掛けにしないと、利用者は伸び悩むのではないか、という気もします。

富士スバルラインは曲線も勾配も鉄道が走れる範囲に収まっているようで、道路を廃棄して鉄道を敷設しようという計画自体には、大きな無理はないようです。架線を掛けることが景観上できないので、蓄電池電車を走らせることになりますが、課題があるとすれば、その技術が確立していないことくらいでしょうか。とくに、下り時の安全性が気になります。

採算性については、1人1万円で、これまで通りのペースで観光客がやってくれば十分黒字になる、という見立てです。技術的にも採算面でも無理がなければ、あとはやる気の問題ですが、山梨県と富士急行が計画に前向きであるなら、話は早そうです。

とはいうものの、技術面でも採算面でも、詳細な検討を経たわけではなく、いまのところ「たたき台」ができた段階です。より緻密な検討が必要なことは確かです。

懸念としては、実現すれば、バスで吉田口五合目へ行けなくなるわけで、登山客は山麓駅で鉄道への乗り換えを強いられます。しかも山麓から五合目に行くだけで1万円もとられるのであれば、登山客には不評でしょう。これまで吉田口を使っていた登山ツアーが、他の登山口に流れる可能性もあり、そうした調整などもまだこれからです。

富士山に登山鉄道というのは夢のある話題で、実現性もありそうですが、本当に実現するかは、何とも言えない、という段階でしょうか。

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